【書籍紹介】「運命」と「選択」の科学  脳はどこまで自由意志を許しているのか?

2021-05-10、
本日の書籍紹介は、「運命」と「選択」の科学  脳はどこまで自由意志を許しているのか?
ハナー・クリッチロウ (著) です。

最近読んだ脳科学系の書籍の中で、そんなに難しくも無く、しかし簡単でもないのですが、ヒトの脳の仕組みについてよく書かれていると考えます。

自分の知らない、自分の「事実」を知りたい方は、是非、読んで欲しい1冊です。

もう「運命」は決まっているから、「努力しても意味がない」などと云う、低レベルの話では決してありませんし、そんなことは記載されていません。

※ちなみに、「脳」が使うエネルギーの内訳ですが、ご存じでしょうか?
■意識活動に・・・・・・・・5%
■脳細胞の維持・修復に・・20%(睡眠がとても大切のです)
■無意識活動に・・・・・・75%

ヒトは、覚醒していても、ほとんど「無意識」で動いているのでしょう。

ですので、おきている時、意識を完全に自分で制御していると思ったら大きな間違いです。
ヒトの「脳」は、意識活動に5%しかエネルギーを使っていませんので、行動認識に関する部分は、その人の背負った遺伝子と、育ってきた環境・境遇に大きく左右されているのです。

例を挙げれば、ヒトは「快感」となった事をいくつになっても止められない(バカゲームなど)し、また恐ろしいほどの「恐怖」を体験すると「PTSD」「トラウマ」になって、自分の意志・意識では制御できなくなります。 このように自分で自分を制御できないのです。

「偏桃体」「海馬」「側坐核」などの機能も大切ですが、特に、第5章 認識する脳―現実は意識の中でどのように形成されるのか  この章が興味深い事が書かれています。

目次
第1章 自由意志か、運命か?
第2章 成長する脳―生涯を通じて脳はどのように変化するのか
第3章 空腹な脳―遺伝的に組み込まれた「食欲」の実態
第4章 いつくしむ脳―恋愛、親子愛、友情の生物学的意味
第5章 認識する脳―現実は意識の中でどのように形成されるのか
第6章 信じる脳―信仰のかたちを神経科学から読み解く
第7章 予測できる脳―未来は変えられるのか
第8章 協力する脳―科学を現実社会に適用する
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本文より、

はたして、わたしたちが生まれ持った脳は、性格や信条、特別な人生経験を決定づけるのだろうか? これが、わたしが調査を試みる「運命」の意味だ。

本書の中心となるのは「主体性」という問題だ。
わたしたちはどの程度まで自分の行為や自分の身に起こることをコントロールできるのだろうか?
自分自身を形成するもののうち、どれくらいが生まれつきの遺伝として脳の機能に書き込まれ、血管を流れているのだろうか?

有名な心理実験として出てくる「マシュマロテスト」をご存じでしょうか? 1960年代にスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが行った実験です。

内容は、
・4歳児にマシュマロやクッキーなどを見せ、1つ選んでもらう
・「おじさんが戻るまで食べるのを待てたら、もう一つあげるね」と伝え、部屋を出る
・15分間子どもが様子を見る

でも結果どうだったかというと、多くの子どもたちが「早く食べたい!」という欲求に負け、平均で3分しか待てませんでした。なんと、15分我慢できた子どもはたったの30%だったそう。

問題なのが、その後10年にわたり行われた追跡調査。

その調査では、子どもの頃にマシュマロやクッキーを我慢できた子はできなかった子よりも

・ドラッグや喫煙などの不良行動をとる確率が低い
・修学年数が長い
・社会的地位が高い
ってことが分かりました。

つまり、「子どものころに誘惑に強ければ、将来成功するぞ!」という話で、逆に言えば「自制心が人生をも左右するかも」という結果が出たわけです。

ところが、

我慢できたからといって将来成功するとは限らない ということがあるのです。

なぜなら、裕福な家庭で育った子は良いが、食べるにも困るような家庭で育った子は、目の前の物を先に取らなければ生きてゆけないことを経験で学んでしまいます。

ですので、我慢できる家庭環境で育った子と、そうでない家庭で育った子を一緒にして評価できないのです。育ちが良いかどうかを分けて評価しないと、「自制心が人生をも左右するかも」という結果が、正しいとは限らないのです。

所詮、ヒトの脳も、電気信号と脳内伝達物質で動いていますが、「人工知能(AI)」で再現できると思ったら大きな間違いでしょう。AIはまだ、単に計算しているだけですが、脳は計算する前の判断、認識に数多くの器官が絶妙に絡んで、現実に対する認識もヒトそれぞれ違うのです。

▮脳を老化から守るための秘訣が書かれていますので紹介しておきます。
身体をよく動かす
・夜はよく眠る
人づきあいを絶やさない
・食事に気をつける
学び続ける
・常に前向きでいる

同じ様なコンテクストの書籍なら、下記をお勧めします。

参考書籍

著者 : 妹尾武治
光文社
発売日 : 2021-03-16

我々の自由意志とは錯覚であり、幻想であるという事実だ。我々の行動は全て事前に決まっている。環境と自己との相互作用による脳の働きによって、必然的で不可避な一つの行動に、我々は導かれる。我々は神の操り人形であるが、その神とは自分自身と世界(外界)との相互作用のことなのである。

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研究が進んでいない、「間質」「脳脊髄液」「細胞外電場」「グリア細胞」「アストロサイト」など、ニューロン(脳細胞)とシナプス以外の脳の中で機能している部分についての記載がとても勉強になる点がお勧めです。

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著者 : 小倉明彦
晶文社
発売日 : 2020-06-05

脳科学の知識を持っている人はもちろん、持っていない人も「神経科学」のこの1冊から知識を深めてゆく機会ができるでしょう。

脳の「情報伝達をする仕組み」と「記憶の仕組み」などが、まだ分かっていない部分も含めて、分かりやすく記載されています。

非常に読みやすく、分かりやすく記載されていますので、難解ではないのですが、考えながら読んでゆくと、なかなかページが進まないのです。

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【書籍紹介】つむじまがりの神経科学講義  小倉明彦(著) 夏休みお勧めの一冊です。

脳科学とメンタルヘルス 関連記事
【書籍紹介】 老化と脳科学  山本 啓一 (著)

【書籍紹介】「もうひとつの脳」 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」

【書籍紹介】「脳の誕生」 大隅 典子 (著) です。

「記憶を思い出すための神経回路を発見」 脳の謎についての研究成果です。


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