2023-02-20、
本日の書籍紹介は、「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか 林朗子(著)です。
精神科医の先生のお話しと違って、精神の状態ではなく、脳の仕組み上、何がどうなると、こうなるかを研究していますので、具体的で面白いのです。
もう脳機能障害に関連する書籍は、百数十冊以上読んでいますが、研究が進んでいるので、新しい知見も出てきています。自分もこの情報に関して「アップデート」する部分も出てきています。そんな方にも最適な本書です。
発達障害の中でも、自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動(ADHD)、PTSD(トラウマ)、うつ、総合失調症などの精神疾患まで記載されています。
そして、このような症状が、どうして生じるのか?
・「心の病」はどこから生じるのか?
・脳の変化が「心」にどう影響するのか
よく、「頭の配線がおかしい奴」と云いますが、配線がおかしいのではありません。
電気製品の基板などの配線とちがい、「脳細胞」内では電気信号(イオン電子)で伝わりますが、ダイレクトに繋がらないように、次の脳細胞には「シナプス」と云う接続部分を介して情報の伝達手段を変えて調整しています。ここは、電気信号ではなく、脳内伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン、アセチルコリン等)で、情報の受け渡しをしていますので、これの過不足が原因で、脳に変化が生じて心の病が発生するのです。しかも、脳には種々の機能部品が存在していますので、それぞれの機能、仕組みも理解する必要があります。
ヒトの脳の構造として覚えておく必要のある事柄は多いのですが、「脳神経細胞(ニューロン)」の数は約1000億個、ニューロンを繋ぐ「シナプス」の数は約100兆個で構成されている。これらを支えているのが、「グリア細胞」などのアストロサイトと呼ばれる細胞群たちです。しかも、このグリア細胞の研究が100年遅れているので、脳のシステムの全貌(仕組み)がまだまだ不明な部分がたくさんあります。
更に言えば、本書には記載されていませんが、脳ではなく、「腸は第二の脳」と言われるヒトの腸内の「腸内細菌(約100兆個)」の影響も受けているのです。
ですので、ヒトの脳に似せた「人工知能」を先に作ろうとしていますが、脳自体の解明ができていないので、ヒトに似せたような物(もどき)しか、未だ作れません。
<目次>
第1部 「心の病」はどこから生じるのか?
□第1章 シナプスから見た精神疾患
~「心を紡ぐ基本素子」から考える:林(高木)朗子
□第2章 ゲノムから見た精神疾患
~発症に強く関わるゲノム変異が見つかり始めた:久島周
第2部 脳の変化が「心」にどう影響するのか
□第3章 脳回路と認知の仕組みから見た精神疾患
~脳の「配線障害」が病を引き起こす?:那波宏之
□第4章 慢性ストレスによる脳内炎症がうつ病を引き起こす?
~ストレスと心と体の切っても切れない関係:古屋敷智之
□第5章 新たに見つかった「動く遺伝因子」と精神疾患の関係
~脳のゲノムの中を飛び回るLINE-1とは :岩本和也
□第6章 自閉スペクトラム症の脳内で何が起きているのか
~感覚過敏、コミュニケーション障害…様々な症状の原因を探る:内匠透
□第7章 脳研究から見えてきたADHDの病態
~最新知見から発達障害としての本態を捉える:岡田俊
第3部 「心の病」の治癒への道筋
□第8章 PTSDのトラウマ記憶を薬で消すことはできるか
~認知症薬メマンチンを使った新たな治療のアプローチ:喜田聡
□第9章 脳科学に基づく双極性障害の治療を目指す
~躁とうつを繰り返すのはなぜか:加藤忠史
□第10章 ニューロフィードバックは精神疾患の治療に応用できるか :柴田和久
□第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する :熊﨑博一
□第12章 「神経変性疾患が治る時代」から「精神疾患が治る時代」へ :勝野雅央
・ビッグデータ解析から精神疾患に迫る:橋本亮太
・計算論から精神疾患を捉える方法:磯村拓哉、高橋英彦
・脳神経系のエピジェネティクスと「心の病」のつながり
・ヒトiPS細胞を使って精神疾患を研究する方法:中澤敬信
・複雑性PTSDとは
・適応障害とうつ病の間
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