2025-04-30、
本日の書籍紹介は、世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ 齋藤 ジン (著) です。
あのジョージ・ソロスを大儲けさせた〝伝説のコンサル〟初の著書ですが、ヘッジファンドのジョージ・ソロス? そんなの知らんがな。。。。です。
五月連休に入りましたね。皆さん、どこかお出掛けの予定は有りますでしょうか?
さて私の場合、去年の7月に「食道癌」の術後、速いもので、まもなく1年となります。本当は、今年のGWは東北岩手県の花巻に出かけ以前から興味深い「宮沢賢治の記念館」に行こうと計画していました。
ところが、東京に居る娘から、「5月1日にバイクで苫小牧(札幌)に上陸します!」と連絡があり、東北行きはあっという間に中止となってしまいました。 盛岡市には古くからのお客様がいらっしゃるので、そちらにも立ち寄ろうと思っていたのですが、全て中止です。 まあ、生きていれば来年でも行けますので、急ぐことはありません。
さて本題ですが、
私の場合、商学部卒で、経済、特に金融などに精通していると思いきや、一番苦手と云うか、興味がないと云うか、一番嫌いな金儲けの亡者たちを助ける人(コンサル)の自慢話の様な書籍で、最初はちょっと嫌でしたが読んでゆく内に、経済、金融などの書籍内の用語で、私が分からないものがたくさんあり、これは、ちょっとまずい、勉強しておかなきゃと云う思いで記載してみました。 もう一つの紹介したい動機は、本書が現代の動向を社会学的な観点からも考察しており、非常に勉強になる点が多いことです。歴史観や時代感に共感できる部分も多く、きっと皆様にとっても有益な一冊だと思います。
資産運用業界の〝黒子〟に徹してきた私が、なぜ初めて本を書くことにしたのか。
それは、日本の方々に伝えたいメッセージがあるからです。
ひとことで言えば、日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えているということです。東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る〝ゲームチェンジ?が起きているのだ。マネーの奔流を30年近く見てきたヘッジファンドのコンサルタントによる初の著書。
■齋藤ジン[サイトウジン]
在ワシントンの投資コンサルティング会社共同経営者。1993年に単身で渡米。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院修士。投資関連コンサルティング業務を営む米国のG7グループを経て、2007年、オブザーバトリー・グループを米国で共同設立。ヘッジファンドを含むグローバルな機関投資家に対し、各国政府の経済政策分析に関するコンサルティングを提供。本書は初の著書(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。
<目 次>
はじめに 日本復活の大チャンスが到来した
第1章 新自由主義とは何だったのか?
第2章 私はいかにして新自由主義の申し子になったのか
第3章 「失われた30年」の本質
第4章 中国は投資対象ではなくなった
第5章 強い日本の復活
第6章 新しい世界にどう備えるか
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<内容説明>
1.新自由主義とは何だったのか?
小さな政府、市場主導の経済、個人の自由を重視する新自由主義の特徴を解説。
1980年代のサッチャー・レーガン時代からの変遷を振り返る。
2.「失われた30年」の本質
日本経済が停滞した理由を分析し、政策の問題点を指摘。
アメリカの経済政策の変化が日本に与えた影響を考察。
3.中国は投資対象ではなくなった
中国経済の変化と国際市場における立場の変化を論じる。
ヘッジファンド業界の視点から、中国の投資リスクを説明。
4.強い日本の復活
日本の生産性向上と経済成長の可能性を探る。
半導体やIT企業の対日投資の増加を紹介。
5.新しい世界にどう備えるか
日本が今後どのように世界経済の変化に対応すべきかを提言。
市場メカニズムを活用し、日本が勝者となる可能性を示唆。
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ここから以下は、私が認識していなかった「用語」を調べたもので、本書籍を読んでいて、この用語が理解できないと。。。と云う点をメモとして記載しました。参考までに。
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1.コンフィデンス・ゲーム(Confidence Game) p18
コンフィデンス・ゲームは、被害者の信頼(confidence)を悪用して金銭やその他の価値あるものを騙し取る詐欺の手口です。日本語では「信用詐欺」や「寸借詐欺」などと訳されます。
1)コンフィデンス・ゲームの典型的な特徴は以下の通りです。
- 被害者の信頼を得る:
詐欺師は、魅力的な人物を装ったり、親切な態度を示したり、もっともらしい話術を用いるなどして、被害者の警戒心を解き、信頼関係を築こうとします。 - 魅力的な誘い:
詐欺師は、高利回りな投資話、掘り出し物の取引、困っている状況への同情などを利用して、被害者に利益や感情的な満足感を与えようとします。 - 段階的な仕掛け:
最初は少額の金銭を騙し取り、成功体験を与えることで、より高額な詐欺へと誘導することがあります。 - 心理的な操作:
詐欺師は、被害者の欲望、恐怖、虚栄心、同情心などの感情を巧みに利用します。 - 証拠の捏造:
必要に応じて、偽の書類、人物、状況などを巧妙に作り上げ、被害者を信用させます。
2)両者の違い
「システム」は、要素間の相互作用によって機能する組織化された全体を指す中立的な言葉であるのに対し、「コンフィデンス・ゲーム」は、他者の信頼を悪用して欺く不正な行為を指す否定的な言葉です。
したがって、「システムは、コンフィデンス・ゲーム?」という問いに対する答えは**「いいえ、全く異なります」**となります。
何か別の意味合いでこの質問をされたのでしょうか?もしそうであれば、詳しく教えていただけますでしょうか?
2.新自由主義の崩壊とは? p20
1) 新自由主義的政策の限界や失敗が顕在化しているという認識:
- 2008年の世界金融危機や、その後の経済停滞、格差の拡大など、新自由主義的な政策がもたらした負の側面が認識されるようになったこと。
- 新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応において、市場原理に任せるだけでは限界があり、政府の介入や社会的な連帯の重要性が再認識されたこと。
- 気候変動問題や環境問題への取り組みにおいても、市場メカニズムだけでは不十分であり、政府による強力な規制や国際的な協力が不可欠であることが明らかになったこと。
2)新自由主義的なイデオロギーや政治潮流の衰退:
- かつては左右の多くの政党で共有されていた新自由主義的な考え方が、大衆の支持を失いつつあること。
- ポピュリズムやナショナリズムなど、新自由主義とは異なるイデオロギーを掲げる政治勢力が台頭していること。
- 社会運動や市民運動の中で、新自由主義的な政策に対する批判やオルタナティブな社会像が 제시されるようになっていること。
3)新しい経済社会システムの模索:
- 新自由主義に代わる、より持続可能で公正な経済社会システムを模索する動きが活発になっていること。
- 政府の役割の再評価、社会保障の拡充、労働者の権利保護、環境への配慮などを重視する政策が議論されるようになっていること。
- 地域経済の活性化、協同組合や非営利団体の役割の重視など、多様な経済主体の連携による社会づくりが模索されていること。
ただし、「新自由主義の崩壊」が完全に起こったと断言することは時期尚早です。
新自由主義的な考え方や政策は、依然として多くの国や国際機関で影響力を持っています。
重要なのは、新自由主義がもたらした課題を認識し、その限界を踏まえた上で、より良い社会のあり方を模索し、具体的な政策として実現していくことでしょう。
これらの情報源から、多角的な視点で「新自由主義の崩壊」について理解を深めることができる。
3.ポスト新自由主義とは
「ポスト新自由主義」とは、1980年代以降に世界的に広がった新自由主義的な政策やイデオロギーの限界や矛盾が明らかになる中で、それらに代わる新たな社会経済システムのあり方を模索する思想潮流や政策の方向性を指します。
新自由主義は、市場原理を重視し、政府の介入を最小限に抑えること、規制緩和、民営化、自由貿易などを主な特徴としてきました。しかし、その結果として、経済格差の拡大、金融危機の頻発、環境破壊の深刻化などの問題が顕在化し、「新自由主義の崩壊」という認識が広まりつつあります。
こうした背景のもとで提唱されるポスト新自由主義は、新自由主義の反省を踏まえ、より持続可能で公正な社会経済システムの構築を目指すものです。その特徴は多岐にわたりますが、主なものとしては以下のような点が挙げられます。
1)ポスト新自由主義の主な特徴
- 政府の役割の再評価:
市場の失敗を是正し、公共サービスの提供や社会保障の拡充などを通じて、政府がより積極的な役割を果たすべきであるという考え方。 - 社会的公正の重視:
経済成長だけでなく、所得格差の是正、貧困の削減、機会の平等など、社会全体の公正さを重視する視点。 - 環境持続可能性への配慮:
地球環境の保全を経済活動の重要な制約条件として捉え、再生可能エネルギーへの転換や環境規制の強化などを推進する考え方。 - 金融規制の強化:
金融市場の投機的な動きを抑制し、実体経済への貢献を重視する金融システムの構築を目指す考え方。 - 労働者の権利保護:
労働組合の強化、最低賃金の引き上げ、非正規雇用の是正など、労働者の権利を保護し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を目指す考え方。 - 多角的で民主的な意思決定:
トップダウンの政策決定ではなく、市民社会や労働組合など、多様な主体が政策決定に参加する民主的なプロセスを重視する考え方。 - グローバルな協力:
地球規模の課題に対応するため、国際的な協調や連携を重視する姿勢。
2)ポスト新自由主義の具体例
ポスト新自由主義の具体的な政策や取り組みは、国や地域によって様々ですが、以下のような例が挙げられます。
- グリーン・ニューディール:
環境対策と経済成長を両立させるための大規模な投資計画。再生可能エネルギーへの投資、省エネルギー化の推進、環境関連産業の育成など。 - ベーシックインカム:
全ての国民に対して、無条件で一定額の現金を給付する制度。貧困削減や格差是正、社会保障の簡素化などを目的とする。 - 累進課税の強化:
所得の高い層への課税率を引き上げ、税収を社会保障や公共サービスに充てる。 - 公共サービスの再国有化: 民営化された公共サービスを再び公営に戻し、国民への安定的な提供を目指す。
- 労働組合の権利強化:
労働者の交渉力を高め、賃上げや労働条件の改善を促進する。 - 地域経済の活性化:
地元の資源や産業を活かし、地域に根ざした持続可能な経済発展を目指す取り組み。 - 協同組合や社会的企業の支援:
利益追求だけでなく、社会的な課題解決を目指す事業体を支援する。
ポスト新自由主義は、まだ発展途上の概念であり、具体的な政策やその実現方法は議論の余地に多く残されています。しかし、新自由主義がもたらした課題を克服し、より良い社会を築くための重要な視点を提供しています。
4.格差社会とは
「格差社会」とは、社会の構成員間で、所得、資産、教育、機会、地位などにおいて大きな格差が存在し、それが固定化または拡大傾向にある状態を指します。単に経済的な不平等だけでなく、社会の様々な側面における不平等を含む概念です。
1)格差社会の特徴
- 所得格差の拡大:
富裕層と貧困層の間の所得差が大きく、中間層が減少する傾向があります。 - 資産格差の拡大:
預貯金、株式、不動産などの資産保有額に大きな差が生じます。 - 機会の不平等:
生まれた家庭環境や地域によって、教育や就職などの機会に差が生じます。 - 階層の固定化:
一度低い階層に属すると、そこから抜け出すことが難しくなる傾向があります。 - 世代間の格差:
親の経済状況が子の教育や将来に影響を与え、格差が世代を超えて受け継がれることがあります。
2)格差社会の原因
格差社会が生まれる原因は複合的ですが、主なものとして以下の点が挙げられます。
- 新自由主義的な政策:
規制緩和、民営化、自由競争の推進などが、一部の富裕層に富を集中させる一方で、労働市場の不安定化や社会保障の削減につながることがあります。 - 産業構造の変化:
デジタル化やグローバル化により、高スキル人材の需要が高まる一方で、低スキル労働者の賃金が低迷することがあります。 - 非正規雇用の増加:
労働派遣法の緩和などにより非正規雇用が増加し、正規雇用との間で賃金や待遇に格差が生じます。 - 少子高齢化:
高齢者の増加と労働人口の減少により、社会保障制度への負担が増し、現役世代の可処分所得が減少することがあります。また、高齢者間でも資産格差が広がっています。 - 教育格差:
家庭の経済状況や地域によって教育機会や質に差が生じ、それが将来の所得格差につながることがあります。 - グローバル化:
海外との競争激化により、国内産業の空洞化や賃金の低下が起こることがあります。
3)格差社会の影響
格差社会は、経済、社会、政治など様々な面に負の影響を及ぼします。
- 経済成長の阻害:
低所得層の消費が低迷し、経済全体の活力が失われる可能性があります。 - 貧困の拡大と固定化:
貧困層が増加し、世代を超えて貧困が連鎖する可能性があります。 - 社会不安の増大:
不公平感や不満が高まり、社会の不安定化や犯罪の増加につながる可能性があります。 - 健康格差の拡大:
経済状況によって医療サービスへのアクセスや生活習慣に差が生じ、健康状態に格差が生まれる可能性があります。 - 教育格差の固定化:
教育機会の不平等が、将来の所得格差をさらに拡大させる可能性があります。 - 政治への不信感:
社会の分断が進み、政治に対する不信感が高まる可能性があります。
日本においても、バブル崩壊後から格差が拡大していると言われています。非正規雇用の増加、高齢化の進展、グローバル化の進展などがその要因として指摘されています。格差の拡大は、社会の活力低下や将来への不安につながるため、その是正に向けた取り組みが求められています。
5.レッセ・フェール型とは p62
「レッセ・フェール(laissez-faire)」は、フランス語で「なすに任せよ」「干渉するな」という意味の言葉です。この言葉から派生した「レッセ・フェール型」という表現は、主に以下の2つの分野で使われます。
1)経済学におけるレッセ・フェール型(自由放任主義)
- 意味:
国家や政府が、企業や個人の経済活動にできる限り介入せず、市場の自由な働きに任せるべきだという考え方です。 - 特徴:
- 自由競争の重視: 企業や個人が自由に経済活動を行い、競争することで、資源が効率的に配分され、経済全体の発展につながると考えます。
- 政府の役割の限定: 政府の役割は、国防、治安維持、司法など、必要最小限にとどめるべきとされます。
- 規制緩和: 市場の自由な働きを阻害する可能性のある政府の規制をできる限り撤廃することを主張します。
- 歴史的背景:
18世紀のフランスの重農主義者や、アダム・スミスなどの古典派経済学者がこの考え方を提唱しました。彼らは、当時の重商主義的な政府の介入が経済の発展を妨げていると考え、自由な経済活動の重要性を主張しました。 - 現代への影響:
現代の経済思想や政策にも影響を与えており、規制緩和や自由貿易などを推進する立場は、この考え方に基づいていると言えます。ただし、現代社会においては、市場の失敗や格差の拡大など、自由放任主義だけでは解決できない問題も指摘されており、政府の適切な介入の必要性も議論されています。
2)リーダーシップ・マネジメントにおけるレッセ・フェール型(放任型リーダーシップ)
- 意味: 上司やリーダーが、部下やチームメンバーに対してほとんど指示や指導を行わず、個々の自主性に任せるリーダーシップスタイルです。
- 特徴:
- 権限委譲: メンバーに大きな裁量権を与え、意思決定や問題解決をメンバー自身に任せます。
- 干渉の回避: リーダーは、メンバーの仕事の進捗や方法にほとんど介入しません。
- 最低限のサポート: 必要最低限の情報提供や資源の提供は行いますが、積極的な指導やフィードバックは少ない傾向があります。
- メリット:
- メンバーの自主性や創造性を引き出す可能性があります。
- メンバーの責任感を育む可能性があります。
- 経験豊富なメンバーが多いチームや、高度な専門知識を持つメンバーで構成されたチームには有効な場合があります。
- デメリット:
- チームの方向性が定まらず、まとまりがなくなる可能性があります。
- メンバーが孤立し、不安を感じる可能性があります。
- 進捗状況の把握が難しく、目標達成が遅れる可能性があります。
- メンバーの能力によっては、パフォーマンスが低下する可能性があります。
- 注意点:
放任型リーダーシップは、リーダーシップの放棄と混同されがちです。効果的な放任型リーダーシップは、メンバーへの信頼と、自律的に動ける環境整備が前提となります。
このように、「レッセ・フェール型」は、経済学とリーダーシップ・マネジメントという異なる分野で使われますが、「干渉を避けて、個々の主体性に任せる」という共通の考え方を表しています。文脈によってどちらの意味で使われているかを理解することが重要です。
6.アメリカの分断の原因は、価値観と経済だと言われているが、具体的には、何が分断されているのか p51
アメリカの分断の原因が価値観と経済にあると言われる場合、具体的に何が分断されているのか、以下に詳しく解説します。
1)価値観の分断
- 文化的な価値観:
- 伝統的価値観 vs. 世俗的・進歩的価値観:
宗教、家族観、性に関する規範、愛国心、社会規範など、伝統的な価値観を重視する層と、より世俗的で進歩的な価値観を持つ層との間で意見の対立が深まっています。 - 個人主義 vs. 集団主義:
個人の自由や自己責任を重視する立場と、社会全体の福祉や連帯を重視する立場との間で考え方が異なります。 - 多様性 vs. 同質性:
人種、民族、性的指向など、多様性を尊重する立場と、伝統的なアメリカの文化的な同質性を重視する立場との間で意見が分かれています。
- 伝統的価値観 vs. 世俗的・進歩的価値観:
- 政治的な価値観:
- 保守 vs. リベラル:
政府の役割、経済政策、社会政策など、政治的なイデオロギーにおいて、保守的な立場とリベラルな立場が大きく異なります。近年、それぞれの立場がより純粋化し、中間層が減少する傾向にあります。 - 連邦政府 vs. 州政府の権限:
連邦政府の権限を強化すべきと考える立場と、州政府の権限を尊重すべきと考える立場との間で意見が対立しています。 - 民主主義のあり方:
選挙制度、投票権、政治参加の方法など、民主主義の基本的なあり方についても意見の相違が見られます。
- 保守 vs. リベラル:
2)経済の分断
- 所得格差:
富裕層と貧困層の間の所得格差が拡大しており、経済的な不平等感が社会の不満を高めています。 - 教育格差:
教育機会の不平等が、将来の所得や社会的地位の格差につながっています。 - 都市部 vs. 地方:
都市部と地方の間で経済状況や雇用機会に大きな差があり、地域間の不満や対立を生んでいます。 - 産業構造の変化:
製造業の衰退やグローバル化の進展により、職を失ったり、経済的に不安定な状況に置かれた人々が不満を抱えています。 - 社会保障:
医療保険、年金、失業保険などの社会保障制度のあり方について、政府の役割や給付水準に関する意見が大きく分かれています。
3)具体的な分断の例
- 銃規制:
銃規制の強化を求める層と、銃を持つ権利を擁護する層の対立は根深く、文化的な価値観や安全保障観の違いが影響しています。 - 人工妊娠中絶:
宗教的・倫理的な価値観に基づき中絶に反対する層と、女性の自己決定権を重視する層の対立は激しく、政治的な争点にもなっています。 - 移民問題:
移民の受け入れに積極的な層と、国境管理の強化や移民制限を求める層の間で、経済的影響や文化的摩擦に関する意見が対立しています。 - 気候変動:
地球温暖化対策の必要性を強く訴える層と、経済成長への影響を懸念し対策に慎重な層の間で、科学的認識や経済的負担に関する意見が分かれています。
これらの価値観と経済の分断は相互に影響し合い、政治的な対立を激化させ、社会の結束を弱める要因となっています。メディアの偏向やソーシャルメディアの普及も、人々の意見を先鋭化させ、分断を深める一因として指摘されています。
7.エスタブリッシュメントの罠とは p55
「エスタブリッシュメントの罠」という言葉は、特定の状況や文脈において、確立された権力構造や体制(エスタブリッシュメント)が、意図せず、あるいは構造的に陥ってしまう問題やジレンマを指すことがあります。明確に定義された用語ではありませんが、以下のような意味合いで使われることが多いです。
1)一般的な意味合い
- 既得権益の固守による硬直化:
エスタブリッシュメントが、自らの地位や権益を守るために、変化や改革を阻害し、結果的に社会全体の進歩を妨げてしまう状況。 - 内向き志向と外部環境の変化への対応遅れ:
長期にわたる成功体験や内部の論理に固執するあまり、外部の新しい潮流や変化に気づかず、対応が遅れてしまう状況。 - 大衆との乖離:
エスタブリッシュメントが、一般の人々の感覚やニーズからかけ離れた価値観や行動様式を持つようになり、支持を失ってしまう状況。 - 自己正当化と批判の排除:
エスタブリッシュメントが、自らの行動や決定を正当化することに固執し、外部からの批判や異論を受け入れなくなってしまう状況。
2)具体的な事例で考えられる「エスタブリッシュメントの罠」
- 政治:
長年政権を担ってきた与党が、過去の成功体験から抜け出せず、新しい社会のニーズに対応できずに支持を失う。 - 経済:
大手企業が、既存のビジネスモデルに固執し、破壊的なイノベーションの波に乗れず、競争力を失う。 - 学術:
権威ある学者が、自身の確立した理論に固執するあまり、新しい視点や研究を受け入れず、学術の発展を妨げる。 - 組織:
歴史のある組織が、過去の慣習やルールを絶対視し、変化への適応を怠り、組織の活力を失う。
3)「エスタブリッシュメントの罠」の特徴
- 自己認識の欠如:
罠に陥っている当事者たちは、自分たちが問題に直面していることに気づきにくい場合があります。 - 構造的な問題:
個人の能力不足というよりも、組織や体制そのものが抱える構造的な問題であることが多いです。 - 脱出の困難さ:
一度罠に陥ると、既得権益やメンタリティの変化が難しく、脱出が困難になることがあります。
「エスタブリッシュメントの罠」は、社会のあらゆる階層や組織において起こりうる普遍的な課題と言えるでしょう。常に変化する環境の中で、既存の成功体験や権威に固執することなく、柔軟な姿勢と外部からの視点を取り入れることの重要性を示唆しています。
8.ディープ・ステイト p56
ディープ・ステイト(Deep State)」は、国家の政治指導部とは独立して、自身のagendaや目標を追求するために活動する、潜在的で、未承認で、場合によっては秘密の権力ネットワークを指す言葉です。
この用語は、1990年代にトルコで、民主主義に反する高レベルの連合を指す言葉として生まれましたが、その後、他の国々にも適用されるようになりました。
1)「ディープ・ステイト」という概念は、以下のような要素を含むことがあります。
- 官僚機構: 選挙で選ばれた指導者ではなく、長年その地位にある官僚や専門家。
- 軍部・情報機関: 国家安全保障に関わる強力な組織。
- 司法機関: 法の解釈や執行に関わる力を持つ人々。
- 金融・産業界: 経済的な影響力を持つ人々。
2)「ディープ・ステイト」の捉え方には幅があり、以下のような議論があります。
- 陰謀論:
一部の人々は、「ディープ・ステイト」を、選挙で選ばれた政府の意向に反して秘密裏に国を操る陰謀的な組織だと考えます。特に近年、アメリカ合衆国において、政治的な対立の中でこの言葉が陰謀論として広く使われるようになりました。 - 構造的な問題:
一方で、「ディープ・ステイト」を、官僚機構や特定の機関が持つ組織的な慣性や、長期的な視点、専門性などが、政治的なリーダーシップの短期的な意向と必ずしも一致しない状況を指すものとして捉える考え方もあります。この場合、必ずしも秘密の悪意のある組織というわけではありません。
3)「ディープ・ステイト」の例として挙げられることのあるもの
- エジプト: 軍や情報機関が歴史的に強い影響力を持つ構造。
- アメリカ合衆国: FBI(連邦捜査局)やCIA(中央情報局)などの機関が、政府の意向とは異なるagendaを持っているという主張。
注意点
「ディープ・ステイト」は、その曖昧さから、政治的な議論においてレッテル貼りや不信感を煽るために使われることもあります。陰謀論的な側面が強調されることも多いため、その使用には注意が必要です。
9.ビスビューとフェドビューの違いは p107
ビスビュー(BIS View)とフェドビュー(Fed View)は、金融政策における資産価格の扱いに関する対照的な考え方です。
■フェドビュー(Fed View)
- 基本的な考え方:
金融政策の主眼は物価安定であり、資産価格の変動に直接的に対応すべきではないと考えます。 - 資産価格の上昇:
資産価格の上昇は、金融政策が直接コントロールすべき対象ではなく、結果として起こりうるものと捉えます。バブルの判断は難しく、金融引き締めによってバブルを潰そうとすると、実体経済に悪影響を及ぼす可能性を懸念します。 - 資産価格の下落:
資産価格が大幅に下落した際には、実体経済への影響を緩和するために、中央銀行は積極的に金融緩和を行うべきだと考えます。 - 代表的な立場:
アメリカの連邦準備制度(FRB)が伝統的にこの考え方に近いとされています。
■ビスビュー(BIS View)
- 基本的な考え方:
金融政策は、将来の金融危機を防ぐために、資産価格の過度な上昇、つまりバブルの形成を未然に防ぐべきだと考えます。 - 資産価格の上昇:
資産価格の急激な上昇は、金融システムの不安定化につながる可能性があり、予防的な金融政策によって抑制すべきだと主張します。たとえインフレの兆候が明確でなくても、金融の不均衡を是正するために、早期の利上げなどの対応が必要だと考えます。 - 資産価格の下落:
バブルが崩壊した場合の影響は甚大であるため、事前にバブルの発生を抑制することに重点を置きます。 - 代表的な立場:
国際決済銀行(BIS)のエコノミストたちがこの考え方を強く主張しています。ヨーロッパの中央銀行もこの考えに近い場合があります。
10.薄なわれた30年 p118
「失われた30年」という言葉は、1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本経済が長期にわたる低成長とデフレに苦しんだ期間を指す言葉として広く使われています。単なる経済の停滞だけでなく、政治、社会にも深い影を落としています。
1)経済
- 長期的な低成長:
バブル崩壊後、日本経済はなかなか本格的な回復を見せず、低い成長率が続きました。 - デフレーション:
物価が持続的に下落するデフレが長く続き、企業の収益悪化や消費の低迷を招きました。 - 不良債権問題:
バブル期に膨らんだ不良債権の処理が遅れ、金融システムの不安定化を招きました。 - 構造改革の遅れ:
労働市場の硬直性、規制の多さ、企業のガバナンス不足など、構造的な問題への対応が遅れました。 - 少子高齢化:
人口減少と高齢化の進行は、労働力不足や社会保障費の増大を招き、経済成長の足かせとなりました。 - IT革命への遅れ:
グローバルなデジタル化の波に乗り遅れ、国際競争力の低下を招きました。 - 賃金の低迷:
長期にわたり賃金が上がらず、消費の伸び悩みにつながりました。
2)政治
- 政治の不安定さ:
短期間での首相交代が繰り返され、長期的な経済政策を実行することが難しい状況がありました。 - 政策の遅れと失敗:
バブル崩壊後の適切な金融・財政政策の遅れが、経済の長期低迷を招いたとの指摘があります。 - 世襲議員の増加:
政治家世襲が進み、新しい視点や改革を求める力が弱まったという意見もあります。 - 政治的無関心:
長期的な経済停滞や政治への不信感から、国民の政治的関心が低下しました。
3)社会
- 雇用不安の増大:
非正規雇用の増加や就職氷河期など、雇用を取り巻く環境が悪化し、人々の将来への不安感が増大しました。 - 格差の拡大:
経済の低迷の中で、富裕層と貧困層の格差が拡大したと言われています。 - 消費マインドの冷え込み:
長期的な景気の低迷や将来への不安から、消費者の購買意欲が低下しました。 - 人材投資の不足:
企業のコスト削減志向などから、人材育成への投資が十分に行われなかったという指摘があります。 - 地方の衰退:
都市部への人口集中が進み、地方経済の衰退が深刻化しました。
「失われた30年」は、日本経済、政治、社会の各方面にわたる複合的な問題であり、その影響は現在にも及んでいます。この期間の経験を踏まえ、日本が再び成長軌道に乗るためには、大胆な構造改革や新たな成長戦略が必要とされています。
11.ルイスの転換点とは? p198
ルイスの転換点(Lewis Turning Point)とは、開発経済学におけるルイスモデル(二重経済モデル)において提唱された概念です。
ルイスモデルは、発展途上国経済を、労働力の豊富な伝統的な農業部門(余剰労働力)と、資本蓄積が進む近代的な工業部門に二分して分析します。経済発展の初期段階では、農業部門から工業部門へ労働力が無制限に供給されるため、工業部門では賃金が上がりにくいと考えられます。
しかし、工業部門の拡大とともに農業部門の余剰労働力が吸収され尽くし、農業部門からの労働力の供給が枯渇する時点がルイスの転換点です。この転換点を迎えると、工業部門は労働力を得るために賃上げをせざるを得なくなり、賃金上昇が加速します。
ルイスの転換点は、経済発展の段階を示す重要な指標とされており、この点を境に経済の構造や成長のパターンが大きく変化すると考えられています。具体的には、以下のような変化が起こり得ます。
- 賃金の上昇 : 工業部門の労働コストが増加し、企業の収益構造に影響を与えます。
- インフレ圧力 : 賃金上昇は消費を刺激し、インフレ圧力につながる可能性があります。
- 経済成長の鈍化: 無制限の労働力供給という成長のエンジンが失われるため、経済成長のペースが鈍化する可能性があります。
- 技術革新の促進: 上昇する labor costs に対応するため、企業は労働代替的な技術革新を進めるインセンティブが高まります。
近年では、中国などの新興国がルイスの転換点を迎えたかどうかについて議論されています。
12.マグニセント・セブン p219
「マグニセント・セブン(Magnificent Seven)」とは、アメリカの株式市場において、特に大きな影響力を持つ巨大テクノロジー企業7社の総称です。これらの企業は、高い成長性や革新性で市場を牽引しており、投資家の注目を集めています。
一般的に「マグニセント・セブン」と呼ばれるのは以下の7社です。
- アップル (Apple – AAPL):
iPhoneをはじめとする革新的な製品とサービスで世界をリードする巨大企業。 - マイクロソフト (Microsoft – MSFT):
Windows OSやOffice製品、クラウドプラットフォームAzureなどを展開するソフトウェア・ITサービス企業。 - アルファベット (Alphabet – GOOGL/GOOG):
Google検索エンジン、YouTube、Androidなどを運営するインターネット関連企業。 - アマゾン (Amazon – AMZN):
世界最大級のECサイトに加え、クラウドサービスAWSも展開する巨大IT企業。 - エヌビディア (NVIDIA – NVDA):
高性能GPU(グラフィックプロセッサ)で知られ、近年はAI分野でも重要な役割を担う半導体メーカー。 - メタ・プラットフォームズ (Meta Platforms – META):
FacebookやInstagramなどのSNSを運営するソーシャルメディア企業。 - テスラ (Tesla – TSLA):
電気自動車(EV)の先駆者であり、エネルギー事業も展開する革新的な企業。
これらの企業は、時価総額が非常に大きく、S&P 500などの主要な株価指数に大きな影響を与えています。また、その技術革新は経済全体にも波及効果をもたらすため、世界中の投資家や経済アナリストが動向を注視しています。
「マグニセント(Magnificent)」は「壮大な」「素晴らしい」という意味を持ち、これらの7社がアメリカのテクノロジー分野を牽引し、株式市場において目覚ましい存在感を示していることを表しています。
ちなみに、「マグニフィセント・セブン」という名称は、黒澤明監督の映画「七人の侍」のリメイクである西部劇「荒野の七人(The Magnificent Seven)」に由来すると言われています。
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