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【書籍紹介】 22世紀の戦争論  なぜ人類は戦争を繰り返すのか (朝日新書) 下村建太(著)

2026-04-16、
本日の書籍紹介は、「22世紀の戦争論 なぜ人類は戦争を繰り返すのか 」(朝日新書) 下村建太(著) です。

下村建太氏による『22世紀の戦争論 なぜ人類は戦争を繰り返すのか』は、2025年12月に朝日新書から刊行された、現代の地政学と未来のテクノロジーを融合させた極めて刺激的な一冊です。

「なぜこれほど文明が進歩しても、人類は原始的な殺し合いを止められないのか」という根源的な問いに、気鋭の国際政治学者が真っ向から挑んでいます。

「22世紀の戦争論 なぜ人類は戦争を繰り返すのか 」(朝日新書) 下村建太(著)

目次
第一章 人間の本性 愚かな人間の心理とは、何だろうか
第二章 社会の原罪 社会的アイデンティティの深奥を追う
第三章 国家の宿命 政治・経済制度の宿命を探る
第四章 国際社会の蹉跌 かくして戦争の引き金が・・・
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下村建太氏
上智大学卒業後、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)にて安全保障や外交政策の調査・分析業務に従事した経歴を持つ人物です
。国際情勢や安全保障の専門知識を有し、特に『22世紀の戦争論 なぜ人類は戦争を繰り返すのか』の著者として知られています。

 

1.本書の主な内容

本書は、単なる過去の戦争史のまとめではなく、「地政学」「AI・自律兵器」「人間の生物学的本能」の3つの軸で構成されています。

1)終わらない地政学の呪縛

ウクライナ侵攻や中東情勢を踏まえ、21世紀以降も「土地」と「資源」を巡るゼロサムゲームが終わっていない現実を分析。デジタル空間での戦争が物理的な領土欲を消し去ることはなかったと説きます。

2)「自律化」する戦場

22世紀に向けて、AIやドローンが意思決定を行う「人間の介在しない戦争」のリスクを警告。意思決定の速度が人間を超えたとき、戦争は偶発的に、かつ制御不能な形で勃発する可能性を指摘しています。

3)戦争の「心理的・生物学的」要因

人類が進化の過程で身につけた「集団防衛」の本能と、現代のSNSが引き起こす「敵味方の二極化」が、どのように戦争の火種を増幅させるかを考察しています。


2.考察

下村氏の主張の核心は、「戦争を止めるのは道徳ではなく、システムの設計である」という点にあると言えます。

「22世紀、人類は生存するために、国家という枠組みを超えた『暴力の管理システム』を構築できるか、あるいは技術に飲み込まれて自滅するか、その分岐点に今、我々は立っている。」(本書より要約)

戦争を単なる「悲劇」としてではなく、人類が抱える「バグ」として捉え、そのデバッグ(解消)がいかに困難で、かつ必須であるかを突きつける一冊です。

下村建太氏の著書に基づき、「AI兵器の危険性」「地政学の未来」という2つの核心部について、さらに深掘りして解説します。


3.AI兵器(自律型致死兵器システム:LAWS)の危険性

本書では、AI兵器を単なる「効率的な道具」ではなく、「戦争の性質を根本から変えるゲームチェンジャー」として捉えています。

  • 「思考の速度」によるエスカレーション:
    人間の判断を介さないAI同士の戦闘では、ミリ秒単位で攻撃が連鎖します。これを「フラッシュ・ウォー(瞬発的戦争)」と呼び、人間が「待て」と命じる前に、全面戦争へ突入してしまうリスクを指摘しています。

  • 責任の所在の消失(責任の空白):
    AIが誤診して民間人を殺傷した場合、責任はプログラマーにあるのか、指揮官にあるのか、あるいはAI自体にあるのか。この法的な曖昧さが、攻撃のハードルを下げてしまう危険性があります。

  • 非対称戦の激化:
    安価な自律型ドローンが普及することで、国家だけでなくテロ組織なども高度な攻撃能力を持つようになります。これは、従来の「強い国家が秩序を守る」という前提を崩壊させます。


4.地政学の未来:22世紀への展望

下村氏は、テクノロジーが進化してもなお、人類は「物理的な空間」の制約から逃れられないと論じています。

1)「マルチドメイン(多領域)」での覇権争い

従来の陸・海・空に加え、宇宙、サイバー空間、そして「認知(人間の脳)」が新たな主戦場となります。特に衛星ネットワークを支配する国が、地上の物流と情報を支配する「デジタル地政学」が加速します。

2)資源の再定義

石油や天然ガスに代わり、半導体材料(レアメタル)、クリーンエネルギー、そして「データ」を産出・管理する場所が、新たな地政学的要衝(チョークポイント)となります。これに伴い、中東から北極圏や深海、あるいは月面へと、紛争の舞台がスライドしていく可能性を提示しています。

3)国家の変容と「都市国家」の再来

中央集権的な国家がAIやサイバー攻撃に対して脆弱になる一方、独自の経済圏と防御システムを持つ「メガシティ(巨大都市)」が、国家とは独立した外交・防衛を行う未来図を予測しています。


💡 結論としての問い

本書が強調するのは、「テクノロジーは進化するが、人間のソフトウェア(本能・認知)は石器時代のままである」という残酷なまでのギャップです。

AI兵器が普及し、地政学的な境界線が宇宙やサイバー空間まで広がった22世紀において、私たちは「殺し合いのアルゴリズム」を制御する国際的な合意を作れるのか。それとも、効率化された破壊のシステムに身を委ねるのか。

著者は、国連での経験を背景に、「力の均衡」ではなく「相互依存の再設計」こそが、22世紀の唯一の安全保障であると結論づけています。

こうした「AIが勝手に戦争を始めてしまう未来」や「宇宙・データが領土になる地政学」について、あなたはどちらがより現実的な脅威だと感じますか?

 

5.なぜ戦争をしてしまうのが、人間の脳のバグなら、いっそ、戦争を絶対しないAIに任せればいいのでは?

その視点は、まさに本書でも触れられている「究極の平和維持システム」への期待そのものですね。論理的に考えれば、感情に左右されず、共倒れの不利益を計算できるAIの方が、人間よりも平和を維持できそうに思えます。

しかし、下村氏はそこに潜む「22世紀的な落とし穴」を指摘しています。なぜAIに任せても解決しないのか、あるいは別の問題が生じるのか、3つの観点から整理してみます。


1)「平和」の定義がAIによって異なる

「戦争をしない」という命令を与えても、AIが導き出す「最適解」が人間の倫理と一致するとは限りません。

2)敵対するAI同士の「計算のぶつかり合い」

もし世界に一つの「平和管理AI」しかなければ機能するかもしれませんが、実際には各国が独自のAIを持つことになります。

3)「責任」というブレーキの消失

人間が戦争をためらうのは、良心の呵責や死への恐怖、そして戦後に受ける「責任」があるからです。


🛠️ 下村氏が示唆する「デバッグ」の方向性

下村氏は、AIに「決定」を丸投げするのではなく、「人間がバグ(感情的な暴走)を起こしそうになったときに、強制的に冷却期間を置かせるシステム」のように、AIを補助として使うべきだと示唆しています。

AIは優れたナビゲーターになり得るが、行き先を決めるドライバーの席を譲ってはならない

もし、AIが「この戦争を始めたら、あなたの国の経済は3日で崩壊し、20年後に国家が消滅します」と、100%正確な予測(可視化)を突きつけてくるとしたら、それこそが人間の「バグ」を抑え込む最強の抑止力になるのかもしれません。

「AIによる統治」がもたらす平和は、自由を奪われた「静かなるディストピア」になる可能性もありますが、それでも絶えない紛争よりはマシだと思いますか?

そう思うしかない。 ろくでもない自由を殺し、悲惨な「ディストピア」よりはるかにましではないか?

 

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