2026-02-22、
本日のお題は、意外と知らない? 自分の性格を「正しく知る」方法――心理学者が説く「自己分析の技術」と「自分の性格が悪いと落ち込む人」の傾向 です。
パーソナリティ心理学の第一人者・早稲田大学文学学術院教授の小塩真司氏の最新刊『人生が生きやすくなる「性格」の話』より、心理学の視点から「性格」を正しく理解し、人間関係や環境との関わり方を見直すヒントを紹介します。
1.自分の性格を知る「ジョハリの窓」
自分の性格をすべて完全に把握できている人というのは、ほとんどいないのではないでしょうか。何度性格診断を受けたとしても、すべてを知ることができると考えるのは正しいとはいえません。自分に起こった過去の出来事や周囲の人の言葉から知るしかありません。
自分で自分のことを認識していることを、「自己概念」といいます。自己概念をより正しく形成するには、コミュニケーションが大きな役割を果たします。
自分に対する理解は、人とのやりとりを通じて気づくことが多いものです。自分の自分に対する認識と、他人の認識との差異を通じて「自分にはこういうところがある」と、自分の潜在的な性格に気づくのです。
自分が知っている自分、他人がわかっている自分というのを分類すると、以下のように4つのゾーンができます。これを「ジョハリの窓」といいます。
「ジョハリの窓(Johari Window)」は、自分と他人の認識のズレを整理し、自己分析やコミュニケーションの改善に役立てるための非常に有名な心理学モデルです。
1955年にジョセフ・ルフト (Joseph Luft) とハリ・インガム (Harry Ingham) によって提唱されました。「ジョハリ」という名前は、二人の名前(Joe と Harry)を組み合わせた遊び心のある造語です。
具体的にどのような仕組みなのか。
2.4つの「窓」の構造
自分自身を「自分が知っているか・知らないか」と、他人が「知っているか・知らないか」という2つの軸で切り分け、4つの領域(窓)に分類します。
①開放の窓 (Open Self) :自分も他人も知っている、オープンな自分です。
・状態 : 性格、能力、外見など、共通認識ができている部分。
・ポイント: この窓が広いほど、隠し事が少なく対人関係がスムーズになります。
➁盲点の窓 (Blind Self) :自分は気づいていないが、他人は気づいている自分です。
・状態 : 「話し方の癖」「意外な長所/短所」など。
・ポイント: ここを指摘されると少し耳が痛いこともありますが、成長のヒントが隠れています。
③秘密の窓 (Hidden Self) :自分は知っているが、他人には隠している自分です。
・状態 : 悩み、トラウマ、意図的に隠している野心やコンプレックス。
・ポイント: 無理に晒す必要はありませんが、隠しすぎるとコミュニケーションに壁が生まれます。
④未知の窓 (Unknown Self) :自分も他人も、まだ誰も気づいていない自分です。
・状態 : 秘められた才能、極限状態で出る反応など。
・ポイント: 新しいことに挑戦したり、他人のフィードバックを受けたりすることで、ここから新しい発見が生まれます。
3.どう活用すればいいのか?
このモデルのゴールは、「① 開放の窓」を広げることにあります。そのためには2つのアプローチが重要です。
-
自己開示(秘密の窓を小さくする) 自分の考えや気持ちを相手に伝えることで、周囲との信頼関係を深めます。
-
フィードバックの受容(盲点の窓を小さくする) 他人からの意見を素直に聞くことで、自分が気づかなかった強みや弱みを把握します。
これらを行うことで、「未知の窓」が開発され、自分でも知らなかった新しい可能性が見えてくるとされています。チームビルディングや研修では、複数人で「お互いの印象」を付箋に書いて交換し合うワークショップとしてよく使われます。「自分ではネガティブだと思っていた慎重さが、他人からは『誠実』に見えていた」といった発見があるのが面白いところです。
4.日本社会での「自己開示」の難しさについて
日本社会において「自己開示(秘密の窓を開けること)」が難しいと感じるのは、あなたの個人的な性格のせいだけではなく、日本の文化的な背景や社会構造が大きく影響しています。
心理学や社会学の観点から、なぜ日本で「ジョハリの窓」を広げるのが難しいのか、その主な要因を整理しました。
1)「察する文化」と「高コンテクスト」
日本は、言葉にしなくても周囲の状況や空気を読み取る「高コンテクスト文化」の代表格です。
-
阿吽(あうん)の呼吸:
「言わぬが花」という言葉があるように、すべてを言葉にする(自己開示する)ことは、時に「野暮」や「説明過多」と捉えられることがあります。 -
リスク回避:
自分の本音(本音)をさらけ出すよりも、周囲との調和(建前)を優先することが、社会的な生存戦略として機能してきました。
2)「恥の文化」と世間体
社会学者のルース・ベネディクトが提唱したように、日本は「恥の文化」を持つとされます。
-
失敗への恐怖:
自分の弱みや悩みをさらけ出すことが「恥ずかしいこと」「未熟なこと」と結びつきやすく、秘密の窓を閉ざす要因になります。 -
世間体:
「他人にどう見られるか」という外部の視線を強く意識するため、平均的な「理想像」から外れる情報を出すことに心理的なブレーキがかかります。
3)同質性の高さと「出る杭」
集団の和を尊ぶ日本社会では、個性を出すことがリスクになる場合があります。
-
同調圧力:
周囲と同じであることを美徳とする傾向があるため、自分の特異な経験や価値観を話すと「変わった人」というラベルを貼られることを恐れてしまいます。 -
境界線の曖昧さ:
公私の区別が曖昧な職場などでは、一度自己開示をすると、どこまで踏み込まれるか分からないという不安から、防衛本能が働きます。
4)日本社会で「自己開示」をスムーズに進めるコツ
いきなり全てをさらけ出すのはハードルが高いですが、ジョハリの窓を少しずつ広げるための「日本的なステップ」があります。
日本での自己開示は「情報の公開」というより、「信頼のお裾分け」だと考えるとスムーズです。「あなただから、これを話します」というニュアンスを含めることで、相手との距離を適切に縮めることができます。
—関連記事—
・【詐欺被害】あなたの証券口座が狙われている インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害が急増!
コメント