社会学

【書籍紹介】  希望格差社会、それから 幸福に衰退する国の20年  山田昌弘(著)

2025-03-03、
本日の書籍紹介は、希望格差社会、それから 幸福に衰退する国の20年  山田昌弘(著) です。

山田氏は、「パラサイト・シングル」「希望格差」「婚活」などの言葉を世に出した、稀代の社会学者で、現代日本社会の実像を分かりやすく表現していて、納得する事が沢山あるのです。

読む前の感想は格差は分かるが、希望格差とは? 初めて聞くキーワードで、格差を希望しているのかと思いきや、希望さえも格差があり叶うことが無い格差の事だそうです。

その結果、逃げ道として現代社会では、「バーチャル世界」で格差を埋める人々が急増、「リアル世界」ではなく、「バーチャルな世界」で「希望格差」の代償を求めていると予想する。

私の分析は楽観的なものではない。格差は広がるだけでなく、固定化し、経済的に行き詰まりをみせている。しかし、様々な意識調査で、平成期に人々の生活満足度は上昇している。特に格差拡大の被害を最も受けているはずの若者の幸福度が上昇している。その秘密は、人々がリアルな世界ではなく、「バーチャル世界」で満足を得る方法を見いだすようになったからと考えている。バーチャル世界に意識を向けさえすれば、平等で希望に溢れた世界を体験することができる。

「バーチャル世界」は、人によってその内容は異なる。ある人はペットとの関係に、ある人はソーシャル・ゲームの中での活躍に、ある人はアイドルの推し活に、幸せを見いだしている。
バーチャルな世界の広がりが、日本社会にとってよいことなのかどうかは、現時点では判断できない。それでも、リアルな世界で格差が広がる中、格差を埋め、人々に幸せを供給するプラットホームとして機能していることは確かなようにみえる。
   (本書「まえがき」より抜粋)

人は社会の状況によって変化させる必要が出てくるのですが、個々の人間の価値観などが、なかなか変化させる事が出来ないために、歪んだ状態になってくるのですが、それを打開できないために、人々は身を守るため、今までにしなかった行動を取るようになってしまう。

それが、社会現象となって、現れてくるのですが、これは予測不能ではなく、クズの政治家たちは次の選挙で自分が当選する事しか考えていませんので、どんな社会が良いのか、対策など、考える事ができるわけがないのです。 やはり、「AI」の力を借りて、将来の状況を分析する必要があるように思います。

 

希望格差社会、それから 幸福に衰退する国の20年

目次
第1章 平成時代に生じた「4つの負のトレンド」
第2章 世界経済の構造転換と「4つの負のトレンド」の発生
第3章 生活者視点から「格差問題」を考える
第4章 格差社会の変遷―過去・現在・未来
第5章 令和の格差社会の形成
第6章 バーチャルで格差を埋める時代
第7章 江戸時代化する?令和日本
第8章 幸せに衰退するニッポン―令和日本のゆくえ

内容説明
「バーチャル世界」で格差を埋める人々が急増。「パラサイト・シングル」「希望格差」「婚活」などの言葉を世に出した稀代の社会学者による現代日本社会の実像が記載されていて、本当によく書かれた書籍で、今年、一番の書籍ですね。

■第1章 平成時代の「4つの負のトレンド」
経済停滞、男女共同参画の停滞、少子高齢化の進行、格差社会の進行

■第4章 格差社会の変遷―過去・現在・未来
就活、婚活 昭和時代には、簡単にできていた就職や結婚が、近年、努力しなくてはできなくなっていることを表している。

■第5章 令和の格差社会の形成
・パラサイトシングルならぬパラサイトディボースド
日本では、若年者は離婚後、男女とも親と同居する割合が高い。
消費実態調査を利用した私の集計では、親と同居しているひとり親の収入が相当低くなっているつまり、パラサイト・シングルならぬパラサイトディボースドとなっている。

・増大する中高年の独身者
孤立するひとり暮らし独身者。よく話す相手 両親 両親がなくなったあと孤立

・2050年には孤立死が年間40万

・今は卒業したら半分の学生は、借金を背負って社会に出ていく 半分の学生は親に出してもらっているおかげで、借金というハンデがない。

・2023年  10組結婚すれば4組離婚する時代に突入している

■第6章 バーチャルで格差を埋める時代
・現実の希望格差をバーチャルな世界で埋め合わせている。まさに現実世界では埋まらない格差を、バーチャルな世界で埋めることで、生き続けるための希望をつなぐことができるのだ。

・リアルな世界で希望がもてないなら、現実を改革しようとか、現実社会に対して反抗しようとするのではなく、バーチャルな世界で希望を見つけようとする人が増大している。
そして、バーチャル世界で満足している人が多いからこそ、「生活に満足している人」が増える。それが、経済が停滞しても、デモもストライキも起きず、犯罪も大きく増えない。日本社会が平和で安全な社会を保っている理由なのではないだろうか。

・日本は、現実の経済格差、家族格差が広がる中で、バーチャル世界で格差を埋めるというシステムの先進国になっているのではないだろうか。

■第7章 江戸時代化する?令和日本
・日本が人口停滞または減少の時期は、3つある。 平安後期、江戸後期、平成後期

共通なのは、戦乱がほとんどなく平和な時代、社会制度が固定され変化に乏しい、階層格差が固定化している、日本固有の文化が栄えた

私はこの5つが相互に関係していると考えている。つまり平和で制度的に安定した時代では、その前半部分では経済成長を伴った人口増加が生じるが、成熟した途端、経済的にも人口的にも停滞する時代が続き、それを埋め合わせるように独自の文化が栄えるという構造が見られる。

・江戸前期、人口増加、経済成長 元禄文化、理想の時代
・江戸後期、人口減少、経済停滞 文化文政文化、虚構の時代

・平成時代を総括すると、停滞した豊かな社会
現実の世界での成功が別世界の出来事なら、バーチャル世界の出来事、体験の方がますます重要に思えてくる

・令和期は、このまま、リアルな世界で豊かな家族生活を築くという希望がなんとか実現できる人たちと、それが無理なので、バーチャルな世界に希望を求める人への分裂が進行していく

・現世に絶望した人の中から、欧米のように、原理主義的新興宗教に走る人も出てくる。
ただ、欧米に比べれば、その規模が小さいのが、日本の特徴で、バーチャルな世界がリアルな世界で希望を失った人たちの受け皿になっていることが大きいと私はみている。

第8章 幸せに衰退するニッポン―令和日本のゆくえ
・知らぬ間に経済的に衰退していく日本、衰退を受け入れる国民

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– 山田昌弘さんの書籍 –

希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

目次
1 不安定化する社会の中で
2 リスク化する日本社会―現代のリスクの特徴
3 二極化する日本社会―引き裂かれる社会
4 戦後安定社会の構造―安心社会の形成と条件
5 職業の不安定化―ニューエコノミーのもたらすもの
6 家族の不安定化―ライフコースが予測不可能となる
7 教育の不安定化―パイプラインの機能不全
8 希望の喪失―リスクからの逃走
9 いま何ができるのか、すべきなのか
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パラサイト難婚社会

目次
【はじめに】夫婦とは「他人」か
【第1章】「結婚」とは何ですか?
【第2章】「結婚生活」には何が要りますか?
【第3章】「未婚」は恥ですか?
【第4章】「離婚」は罪ですか?
【第5章】「結婚」が人生に与えるもの

関連記事
【書籍紹介】パラサイト難婚社会  山田 昌弘 (著) 今年の「最高傑作」日本の現代社会のことが良く書かれています。

追記> パラサイト・シングル社会
「パラサイト難婚社会」の具体例になるかどうかは分かりませんが、30歳を過ぎても自立できず、親にパラサイト(寄生)して、のんびり、のらりくらり暮らしているダメ「メス」が結構多いのが目立ちます。

その中の一人は、4年生大卒女子ですが、自分のせいで自立できないと云う発想は毛頭なく、30歳を当に過ぎているが、会社のボスの前で「うちの会社は給料が安いから自立できないですよね!」と、躊躇いもなく「ほざく」のです。 こんな「脳」の狂った配線状態ですので、例え結婚相手を見つけても、性格が悪いので相手にしてもらえず結婚もできない。 間違って、できたとしてもすぐ離婚でしょう。
こんなメスは毒親(たいてい毒親育ち)に囲われて、一生パラサイトシングルをしていればいいのです。哀れで救われないメスもいるのです。

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最後に、
社会学を勉強すると、世の中の普通と言われている人々(庶民)の行動が、ある程度、予想できるようになりますと云うか、どんなところに流れて行くのかが観えてくる。 それは厄介だが、そんなに難しい事ではなく、弱さ故に、流れ着く所に流れてゆくだけの話です。

諸問題の原因は、政治の弱体化、世界の情勢、個人の傾向など、要素は一つではないが、これらの影響を余り受けないで、生きて行ける人間は、ごく少数で、大多数の人間は、徐々に希望の諦めを隠す為の歪んだ行動に走って行く場合が多い傾向にあるように思います。 世の中の流れは、誰も止められないのです。

更に言えば、平和な時代がその国で続くと、世の中が成熟するとは限らず、「退廃」して行く場合もある。そんな意味で言えば、不条理な「戦争」が定期的に勃発した方がリセットができて、絶望が過ぎて、また希望が生まれる事があるような気もする。 あまり、よい考え方ではないが、これが人間の宿命の様にも思う事が、悲しいですね。 「ホモサピエンス」は、宇宙一、どうしようもない生物なのでしょう。

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